2020年09月15日

阿部智里『楽園の烏』文藝春秋

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『烏に単は似合わない』(以下『単』)から始まる八咫烏シリーズの最新刊、『楽園の烏』を購入しました!『単』のコミカライズ版が無事完結し、次は『烏は主を選ばない』もコミカライズされているそうで、八咫烏シリーズのブームの兆しを感じます。このブログを書きはじめる前に『単』〜『弥栄の烏』は読んでしまっているので、感想はここには書いていないですが、どの巻もとても魅力的で面白いので、興味のある方は読んでみてください。私は山内の核心に迫る『玉依姫』が推しです。

と、話題を戻しまして。今回は先日購入したばかりの『楽園の烏』の感想を核心的なネタバレをしない程度に描いていきたいと思います。

今回の主人公となるのはおそらく、安原はじめ。はじめは八咫烏ではなく人間です。ある日、養父の失踪により「山」を相続します。養父の言葉によると「その山を売ってはいけない理由がわかるまで、山を売ってはならない」そうです。じつは、その「山」は、『単』から描かれ続けている八咫烏たちの住む「異界」へとつながる「山」だったのです。「山」を相続したはじめのもとに、「山」を買い取りたいという人物が入れ代わり立ち代わりやってきますが、はじめは養父の言葉を守り、頑なに「山」を手放そうとしません。
ある時、はじめは真白なワンピースを着た手足の長く腰のくびれた少女と出会います。
その少女に導かれ、はじめは八咫烏たちの住む「異界」、山内へと入ってしまいます。

とまあ冒頭部分を説明するならこんな感じでしょうか。安原はじめはちゃらんぽらんしてますが、バカな男ではないということが文章から伝わってきます。そして、『単』〜『弥栄の烏』で活躍していた「彼ら」も年を取った姿で登場します(一部登場しない人たちもいますが)。

しかし、「楽園」って何なんでしょうね。「正義」って何なんでしょうね。

そんなことを考えさせられる第二部第1巻でした。
posted by 三城 at 22:39| 読書

2020年09月10日

幸田露伴『魔法修行者』青空文庫

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幸田露伴の『魔法修行者』を買いました。ペーパーバック版の本なので、約50ページで500円という同人誌並みの値段です(笑)ですがやはりkindleやネットではなく紙媒体の本でほしかったので買ってしまいました。悔いはないです。

さて、なぜ私が幸田露伴の『魔法修行者』を購入したかというと、細川政元の事が書いてあるからです。わあ。わかりやすい動機。読み進めていくと、まず細川勝元……政元のおとうさんの事が書いてありました。


―はじめ勝元は彼だけの地位に立っていても、不幸にして子がなかった。(中略)武将だから毘沙門とか八幡とかへ願えばまだしも宜いものを、愛宕山大権現へ願った。(幸田露伴『魔法修行者』青空文庫24頁)


この記述の通り、勝元がちょっと人と変わっているところがあったと書いてあります。いや、本当なんで子宝祈願で愛宕山に祈っているんだ勝元。謎すぎる。そのあとは、


―勝元は宗全と異って、人あたりの柔らかな、分別も道理外れをせぬ、感情も細かに、智慧も行届く人であったが、さすがに大乱の片棒をかついだ人だけに、やはりきぶいところがあったと見えて、愛宕山権現に願掛けした。(幸田露伴『魔法修行者』青空文庫24頁)


勝元めちゃくちゃ褒められてるじゃないですか。しかも宗全とは異なって、ってことは宗全はまあおおよそ、その逆ってことですよね。性格が真逆なのによく20年間も同盟関係続けられたなあと感心します。まあ、家同士の結びつきなので、本人の意向はあまり重視されていなかったのかもしれませんが……。面白いなあと思いました。
さて、そろそろ本題の政元に関する面白い記述をご紹介したいと思います。全体的にこの本に書かれている政元像は面白いのですが、特に面白かったところのみ抜粋して書こうと思います。まず一つ目。


―この頃主人政元はというと、段々魔法に凝り募って、種々の不思議を現わし、空中へ上ったり空中へ立ったりし、(中略)その位の事は出来たことと見て置こう。(幸田露伴『魔法修行者』青空文庫28頁〜29頁)


……いやいやいやいや。
いくら政元が修行したからと言って、空中には立てないでしょ。政元いったい何者って話ですよ。でもそういう風に解釈されていたということは、それほど政元が魔法に凝っていた証拠でもありますよね。いやあ政元さんすごいっス。そして、あまりにも魔法にこだわるあまり、一族や内衆はじめ家臣たちに白い目で見られ始める政元。政元はそんなことは意に介さず、修行を続けます。一度こだわると徹底的にやらないと済まない性格だったのでしょうか。それとも、自分は父・勝元が愛宕大権現に願って生まれた子であるから、もう一人の親ともいえる愛宕大権現を敬わなければならないとでも考えていたのでしょうか。真相は謎ですが。
さて、最後にもう一つ紹介するお話がこちら。


―そこで与一(薬師寺元一)は赤沢宗益というものと相談して、この分では仕方がないから、高圧的に強請的に阿波の六郎澄元殿を取立てて家督にして終い、政元公を隠居にして魔法三昧でも何でもしてもらおう(幸田露伴『魔法修行者』青空文庫29頁)


隠居して魔法三昧。
いやあすごい言葉ですね。政元が聞いたら「わーい!じゃあ私隠居します!!後ヨロシク!!」と喜びそうなのに、そうはならなかったんですよね。不思議。この薬師寺元一の乱は政元に瞬時に鎮圧され、元一は切腹します。政元はまだ権力を手放したくなかったのでしょうか。魔法にこだわるのか、権力を保持したいのか、どちらかにしてほしいですね。周りの迷惑とか考えなかったのでしょうか。謎は深まるばかりです。

posted by 三城 at 22:33| 読書